テーマ:シナ体験

【第四十九夜】 はじめてのパリ

それは、北京からシベリア鉄道でベルリンまでを一週間かけて旅したその夏のことだった。わたしははじめてパリにいた。モスクワからの列車はパリ行きだったのであったが、ベルリンで下車したから、その後のことである。 八月のパリは閑散としていた。休暇で多くの人々が首都を抜け出していたからだ。街で目に付くのはドイツ人旅行者と道路掃除のアフリカ人だ…
トラックバック:0
コメント:13

続きを読むread more

【第四十八夜】 長安街を行くバス

北京の人々は、上海のそれとくらべておっとりとして礼儀をわきまえた振る舞いをするな、と感じたのは、上海に住んでからのことだった。 とくにお年寄りの方たちの、こちらが礼を示したときのきちんとした対応は好ましいものだった。 上海では、こちらが外国人とわかっていても上海語で押し通す強情さがあった。あれはきっと北京語を話せないからだと…
トラックバック:0
コメント:8

続きを読むread more

【第四十六夜】 ざわめく夜

ひさしぶりに夢を見た。どうも上海のようだが確かではない。ただ人が溢れかえるその様子は、上海南京路のようにしか思えない。 わたしは実に久しぶりにシナ語を耳にしている。 すこし懐かしい気分なのはなぜだろう? しかし見知った人間は誰一人としていないのだ、ただ遠慮ないあたりをはばからぬ大声がわたしの前後左右を飛び交っているだけ…
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

【第四十五夜】 ベルリン植物園

わたしが一週間のシベリア鉄道の旅を終えて、ベルリンに到着した経緯についてはもうすでに述べておいた。ここでは、短かった最初のベルリン滞在の際の、小さな想い出について述べてみたい。 そのころのベルリンは東西を壁に隔てられていたのはご存知のとおりである。ポツダマー広場などは、草茫茫としてガラーンとした廃墟というよりもまだ惨めな様子であっ…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

【第四十四夜】 桐の花

不吉な夢に目覚めると、ざらざらとした枕がほほに触れた。 ナイト・テーブルの上にもうっすらと細かいパウダーのような砂が積もっている。 今日も外は黄沙が吹いている。この部屋は南向きなのに、コの字に設計された建物のせいか、風が巻き込まれるようで、やはり窓にはときおり強い風が吹きつける。 こん…
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

【第四十三夜】 断ちきれない泡

もう二十数年もたったというのに、折にふれてぽっかりと浮かび上がってるくる光景がある。想い出というほどのものではない、ただのなにげない出来事なのではあるが。 その夜は、他の大学の友人とおそくまで話し込んでしまい、少し離れた自分の大学の宿舎に帰るころは、もう道にはほとんど人通りはなかった。 それでも道筋にある工場群は、闇に溶け込…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

【第四十夜】 浄土から飛んできた霊峰

前回の第三十九夜でのべたとおり1980年に上海と杭州をおとずれたことが、わたしの最初のシナへの旅でした。結果的にはそのことがいっそうシナへとわたしの心身をのめりこませることになった「心の旅」になってしまったのでした。 もうそのころは大学でかじったシナ学も忘れかけていましたが、その旅から帰って再度シナ語学習にうちこむということにもな…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more